キミが居た病院

 ベッドから降りて窓のほうにいき、下を見下ろすと、誰一人歩いていなかった。

 この状況で歩ける人はそう居ないと思ったのも束の間、遠くの花屋の曲がり角から曲がってくる人が居た。


「うわー! 傘とか持ってないけど飛んじゃったのかな!?」


 人間というのは不思議なもので――

 興味をそそられるとついついそちらに夢中になってしまうものである。

 火事が起こった現場に野次馬が集まるのもきっとそういう事なのだろう。

 同じように優香が興味をそそられたその人物は、傘を持っていなかった。

 概ね、あまりの風邪の強さに飛ばされてしまったのだろう。


< 127 / 246 >

この作品をシェア

pagetop