キミが居た病院

「んー。パパに逢う時の夢、話したでしょ? 眩しい光の中にいるってやつ」

「うん、覚えてる」

 秋人はテーブルに置かれた色とりどりのクッキーを、一つ掴んで口に運びながら答えた。

「たまに見るのはね、場所は同じ感じなんだけど暗いの。地面は泥みたいなやつでグチャグチャって」

 出来れば、あまり思い出したくなかった。

 思い出そうとしなくても鮮明に頭に映し出されるあの光景に吐き気がする。

「ただ、暗くてじめじめしているだけなのに、なんか心が痛くなるの。そんで…頭痛もする」

「うん……話すのはゆっくりでいいから」


 優香はベッドサイドテーブルに置いたホットミルクティーを一口飲み、呼吸を整えた。


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