キミが居た病院

「優香? 続きは?」

「あっ、ごめん! それでね、やっと誰か来たと思ったら脚を引きずりながら歩いてくるの」

 思い出すだけで震え上がってしまう。

 だがその手を、強く――だが優しく秋人が握ってくれる。

「動きもちょっと変なの。映画でよくあるゾンビみたいな……でね、そこで気が付くの。あぁ、あれは黒い物体だって」

「そうか……そこまで……」

「私を見ながら、目を凄く見開いて、歯をむきだしにしてくるの! 最初見たときみたいに」

「うん、うん。落ち着いてね」

「でもそれが気持ち悪い笑顔って感じで、でも寂しそうっていうか。だけど怖いから走って逃げようとしたの……」


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