キミが居た病院

 痛みを必死にこらえ、携帯を握り締めてベッドから飛び降り、急いで部屋を出た。

「どこか……どこかっ」

 この時間、ほとんどの患者さんは病室に居るので行く宛てが無かった。

 中庭にはまだ鍵がかかっているので出られない。

 鏡が無くて人が居る所――


「ナースステーション!!」


 医者の警告などすっかり忘れて、無我夢中で階段を駆け下りる。

 優香の病室がある二階にももちろんあるのだが、美沙は一階に居ることが多いと聞いた事があったのだ。


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