狼執事とお嬢様♡~ある日の狼~
「ただいま。」
いつものように、言ったんだ。
そしたら、いつものように…
母が柔らかい笑顔で、
「お帰り」
そう、言ってくれるはずなのに…
家は、人の気配を感じさせようともさせてくれなかった。
しん、とした静寂が家の中に満ちる。
その静寂が長く続けば続くほど、俺の心音は今にもこの家に響きそうになる。
ゴクリ、と生唾を飲み込み、1歩前へ出る。
「母さん…?」
学校では特に誰と話すわけでもない俺は、母と楽しく喋る事が楽しみで。
その、毎日の楽しみが、
こんなにも呆気なく終わりを告げるなんて…
思ってもいなかった。
俺は母の寝室へ足を踏み入れる。
瞬間、血の気が引き、心臓が凍りつく。