ただ あなただけ・・・
それから一時間ほどして、妃奈はできあがってきた。
「う〜・・・なんれ、さとしがう、うわき・・なんれ・・・グス・・」
「ね、妃奈もう止めなさい。今日は帰ろ」
テーブルに突っ伏したままグラスを手にして、ぶつぶつと聡志の不満を言っている
妃奈の周りには空になったグラスがずらりと並んでいる。
「一気に飲み過ぎだよ。どれだけ辛かったのか痛いほどわかるよ」
いつの間にか酔いがさめている亮治は妃奈の顔を覗き込んだ。
「これじゃあ彼が来ても駄目ね」
涼子は時計を見ながら亮治に尋ねた。
「ん〜そうだなぁ。あいつ遅れるって連絡よこしたけど、あれから来ないな」
ちらりと携帯を見たが『彼』からの連絡は無かった。
「しょうがないなぁ。俺、連絡してくるから」
そう言って亮治は席を離れた。