ただ あなただけ・・・

――や・・やだ・・緊張・・してきた・・・――


いつの間にかシャワーの音がしない。もうすぐ彼が出てくるだろ。妃奈は布団の裾をぎゅっと掴んだ。


ガチャ・・・扉の開く音がした。



―――来たっ―――


なぜか視線が外せなかった。




バスローブ姿の彼を。男性を綺麗だと思ったのは、初めてだった。女性とは違う美しさ。端正な顔つきに、切れ長の瞳。すっと通った鼻筋に、形の良い唇。おまけに、まだ乾いていないのか、雫が垂れる黒髪。


聡志も背が高い方だったが、それよりも高い。180センチ以上はあるだろう、スタイル抜群だ。


「・・・気分はどうだ?」


男は冷蔵庫からミネラルウォーターを二本取り出し、一本を妃奈に渡した。


「あ・・・ありがとうございます・・・・」


妃奈がそう言うと、男は口角を上げ微笑んだ。そして、ベッドの近くにあったソファーに座った。
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