ただ あなただけ・・・
私は小走りで五十嵐に駆け寄った。
「すみませんっお待たせしました」
五十嵐は微笑み、私の頭を撫でる。
「・・・行くか」
そう言って、車のドアを開けてくれる。私は素直に車に乗り込んだ。
どこに行くかは知らない。昨日の連絡では、時間と待ち合わせ場所しか教えてくれなかった。
――デートかぁ・・・つい最近まで聡志としてたのに、今は別の人とだなんて・・・信じられない・・・――
ちらっと隣を見ると目が合う。
「・・・私のどこが気に入ったんですか?」
「・・・・・・・・」
「あの日初めて会ったのに、気に入ってくれて・・・私はあなたの事何も知らないのに」
「・・・・・・・・・」
五十嵐は何も言わずに、車を道の脇に停めた。