ただ あなただけ・・・
嫉妬
「妃奈――?」
振り返らなくても分かる。聡志だ。でも、彼が一人でこんな所に居るはずが無い。おそらく・・・・・・
「・・・聡志さ〜ん?あ、若葉さんだ。こんにちはぁ、偶然ですね」
九条が聡志の後ろからひょっこり顔を出し、天使の微笑みで言う。
二人に見つかっては無視出来ない。私は軽く深呼吸をして振り返る。
「こんにちは。えぇ、ちょっと買い物に来たのよ」
「そうなんですかぁ。私達もショッピングに来たんですよね〜、聡志さん?」
九条は聡志の腕に、自分の腕を絡ませ上目使いで言う。
「――あ・・・あぁ・・・・」
聡志は曖昧に答える。明らかによそ事を考えているようだ。
彼の視線の先には隼人さんが居る。
「妃奈、この人は・・・?」
聡志が低い声で聞く。・・・・今まで私が聞いたこと無い声で。