ただ あなただけ・・・

私を抱きしめる力が強くなる。まるで自分の腕の中に閉じ込めるように・・・


ゆっくりと唇が離れる。久しぶりに聡志の顔を見つめる。心なしか、痩せた気がする。


「・・・戻ろう・・・?九条さんが拗ねちゃう」


私は彼を促した。これ以上一緒にいたらだめだ。離れたく無くなる。


コツ・・・コツ・・・

靴音が聞こえる。振り返ると隼人さんがいた。


今の行為を見られたと思い、顔を背けた。


「彼女が待ってますよ。早く行ってあげないと・・・」


隼人さんの言葉で私達は離れた。


「・・・妃奈、悪かったな・・・五十嵐さんもご迷惑かけました」


聡志は頭を下げ、九条さんのもとに戻って行った。
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