ただ あなただけ・・・

「・・・私の方が嫌な思いをさせて・・・すみません・・・」


「妃奈が謝る事じゃない。それに――」


隼人さんはそう言うと、言葉をきった。


――・・・私・・・何を言ってるんだろう・・・隼人さんは別に気にして無いのに・・・・嫌な思いをするはずない・・・――


言ってしまった後に後悔しては遅い。自分から浮気相手、なんて言う人に「本気」を求めてはいけなかった。


――恥ずかしい・・・自惚れてたんだ・・――


「俺が言い出したことだ。二番目でもそばにいてくれるなら、それでいい」


「・・・え・・・?」


伏せていた顔を上げると、少し切なそうに微笑む隼人さんがいた。


初めて見た。いつもの妖しい微笑みではなくて、胸を締め付けられるような切ない笑顔。


突然の出来事に私は言葉が出なかった。
< 49 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop