ただ あなただけ・・・
土曜日、誰も居ない会議室。私は彼にまっすぐ見つめられていた。

「これから用があるから手短にして」


「・・・俺は別れない。それだけだから」

―は?何いってるの?あの子がいるじゃない。堂々と二股宣言?それだけって―


「私は好きじゃない。もう終わりにしましょう。あ〜もう五時半じゃない。お疲れ様でした、藍沢主任」


妃奈は一礼をしてドアノブに手をかけたが、いきなり肩を掴まれれ、扉に押し付けられた。


「・・・っつ!何するの」


振りほどこうとしてもびくともしない。むしろ強く掴まれる。
彼の表情は見えない。しかし歯をきつく食いしばっている。


「離してくださ・・っん!!」


キスをされた。いつものキスじゃない、荒々しい強引なモノ。


「やめて!!」


思いきり彼を突き飛ばし部屋を出た。


―信じられないっ自分で浮気しておいて別れる気はないって―

時計を見ると6時を回っていた。急いでデスクに戻り、荷物を詰め込み、待ち合わせ場所に向かった。
< 7 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop