結婚事情
玄関を入ると、当然家の中はまっくらだった。

リビングの窓から、外の明かりがちらちらと瞬いていた。

ナオは電気をつけないまま、私を背後からぎゅっと抱きしめた。

そして、私の首筋にキスをした。

ドキドキする。

ノボルと付き合っていた頃、そういうこと最後にしたのいつだったっけ?

すごく久しぶりなような気がする。

ナオはキスの時と違って、何も言わず、私をベッドの上に横たえた。

少しだけ抗ってみたけれど、ナオの優しく吸い込まれるようなキスにそのまま身をゆだねた。

ナオは最後まで紳士的に私を愛してくれた。

愛しなれてるとかそんな感じではなく、ただ、私のために愛してくれてる感じがした。

ナオの肌の温かさと重みが、心地よかった。

ノボルの時には感じたことがなかったこと。

すべてが終わった後、ナオは私の手を握っていった。

「ごめん。」

「ごめんって今更じゃない?」

私は笑った。

ナオの手に自分の指を絡ませながら、

タツヤともしこんな風になったら、どう自分は感じるんだろうって思っていた。

ごめんね、ナオ。
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