結婚事情
服を着替えた後、ナオは約束通り車で家まで送ってくれた。

家に着くと23時すぎだった。

久々に遅くなったな。

車を降りようとした時、ふいに腕をつかまれる。

そしてナオは私にキスをした。

さすがに家の前でのキスって、落ち着かない。

思わず、すぐに身を引いた。

「また。気をつけて帰ってね。」

「ああ、うん。また電話する。」

ナオの車が見えなくなるまで見送った後、私は静かに玄関の鍵を回した。

「おかえりー。遅かったわね。」

リビングから母親の声がした。

「ただいま。」

何となく気まずくて、リビングに顔を出さずに階段を上がっていった。

「えっと、誰だっけ。前病院まであんたを運んでくれたタツヤくん?とでもデートだったの?」

にやついた母親が階段の下で声をかけてきた。

「違うって。」

やばいやばい。

そういや、今や母親が私の男性関係で知る名前はタツヤだけだったわ。

ナオのことは、きちんと話さなきゃって後回しにしてたんだった。

今度は、ちゃんと紹介しておかなくちゃね。

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