結婚事情
「私、ハルナに言い過ぎたよね。ごめん。」

アユミの声だけが更衣室に響いてる。

アユミが謝ることないのに。

全部私が悪いのに。

「なんとなく、女の勘っていうか。タツヤはハルナのこと気になってるんじゃないかなって思っちゃっててさ。いわゆる嫉妬。嫌な女やっちゃったよね。」

アユミはロッカーの向こうで寂しそうに笑ってるような気がした。

「私さ、もう大丈夫だから。もし、ハルナがタツヤのこといいなーって思ったら、気にしないで付き合って。」

どうして?

アユミはそんなことが言えるの?

どこまでいいやつなの?

私はうつむいたまま、何も言えなかった。

アユミより年上なのになんて情けないんだろ。

なんてなさけない30歳。

こんなの誰も選ぶ資格なしだよ。

きっとアユミは私なんかよりずっとずっと辛いのに。

「アユミ。きちんと話する。アユミのこと大事だから、自分の気持ちはっきりさせて、きちんとアユミに話しする。だから、もう少しだけ待ってて。」

それだけを言うのに、どれだけ言葉に詰まってしまうんだろう。

「うん。待ってる。」

アユミは優しく言った。

私は静かに更衣室の扉を閉めた。
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