結婚事情
「お店とか決めてるの?」

タツヤが聞いてきた。

「うん。一応ね。今日は私が誘ったんだから。」

「何系のお店?」

「韓国風鍋。」

「韓国風鍋?!」

タツヤは明らかに驚いているようだった。

「普通、女性ならパスタとかフレンチとか、そんなんじゃないの?」

「普通じゃなくて悪かったわね。」

私はタツヤの方を冗談ぽくにらんだ。

「うそうそ。俺、韓国料理大好きだし。マッコリとかうまいもんな。」

「でしょ?最近見つけたお店の中でも一押しなんだから。楽しみにしててよ。」

いつものように笑った。

いつものように色気もなく。

駅に向かう大通りの脇の路地に入る。

この路地に入ると、とたんに人気が少なくなるんだよね。

女同士だと、少し寂しく落ち着かない路地が、今日はタツヤと一緒だと逆に落ち着いた。


「えらくマニアックな場所にあるんだ。」

タツヤは興味津々な様子で周囲をきょろきょろと見回した。

「はい、到着~。」

私はお店の前で立ち止まった。

そこはとても小さいお店なんだけど、味は天下一品。

知る人ぞ知る韓国料理のお店。

誰に教えてもらったかっていうと・・・

アユミだったりするんだけどね。

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