結婚事情
タツヤはふざけた表情で言った。

「じゃ、俺だろ?ねーさんが気になる相手ってさ。」

不覚にも顔が熱くなる。

コップに3分の1ほどのマッコリをぐいと飲み干した。

「だとしたら?」

タツヤの表情が途端に緊張したのがわかった。

「だとしたら?・・・って言われてもさ。」

タツヤは手元に視線を落とす。

「もし、仮に今の言葉が冗談じゃなくてもさ、フィアンセのいる身でそんなこと言ってくるのって卑怯じゃない?」

「卑怯?」

「全く対等じゃない。俺がねーさんにどういう返事をしても、ねーさんが有利。」

「よくわかんないんだけど。」

「片手にフィアンセ掴みながら、『好きだ』って言われてるようなもんだぜ。本気だったら、フィアンセを手放してから言うんじゃない?普通。」

なんだかくやしかった。

そんなんじゃないのに。

そんな気持ちじゃないのに。

ただ、私はどうしていいかわからなくて。

それで。


でも。

タツヤの言ってることに完全に否定できない自分がいた。

そう、最初からわかっていたこと。

タツヤにはそれでも通用すると思っていた私が浅はかだった。
< 123 / 215 >

この作品をシェア

pagetop