結婚事情
「こないだ、私を病院に送ってくれたでしょ?あのとき、私が寝てる横で『結婚するな』って言ってたような気がうっすらとしててさ。半分寝てたから定かではないんだけど。どういう意味だったのかなって。」

タツヤの顔が思いきり紅潮したのがわかった。

「ちぇ、なんだよ。聞いてたのかよ。」

つぶやくような小さな声で言った。

やっぱり。

あれは空耳じゃなかったんだ。

自分の中の何かが柔らかく温かくなっていくような気がした。

「あれ、全部聞いてたの?」

タツヤはこちらを見ずに聞いてきた。

「うん。夢見心地な感じではあったけど、大方。」

「なんですぐに言わないんだよ。」

「だって、あの時は高熱に浮かされてたし、半分夢見てた状態だったし。それに・・・。」

「それに?」

「そんなこと、タツヤが私に言うなんて思いもしなかったんだもん。」

タツヤはどうしていいのかわからないのか、頭をくしゃくしゃとして左手でほおづえをつき、右手にマッコリを持った。

「なんていうかさ。俺、今すごく恥ずかしいんだけど。」

その横顔はとても愛しかった。

「私さ、タツヤにあれが本心なのかどうかってずっと聞きたかったんだ。」

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