結婚事情
タツヤのきつめの口調に、私の中心が瞬時に緊張した。

タツヤは長いため息をついた。

「まさか、どっちも好き。どっちかなんて選べない、なんて少女漫画みたいな雰囲気に酔いしれてんじゃないだろうな。」

「ち、違うよ。そんなんじゃないよ。」

「何が違うんだよ。俺にはそうしか見えない。俺、そんなねーさんには全く魅力を感じない。」

その言葉に、自分が奈落の底に突き落とされていくような錯覚を覚えた。

どうして、こんなにタツヤの一言に一喜一憂してるんだろう。

私は、結局タツヤに振り回されてる。

明らかに落ち込んだ私の顔を見て、タツヤは語調を和らげた。

「そんな落ち込むなよ。ねーさんより俺の方が落ち込んでるのにさ。」

「タツヤは言い方がきついのよ。白黒はっきりしすぎっていうか。だからさ、私だって、どうしていいかわらかなくなるのよ。」

自分の口から、驚くほどスムーズに出てきた。

頭で考えるより先に。

タツヤは前髪を掻き上げた。

「じゃ、この際だから、もっとはっきりさせるためにねーさんに聞いてもいい?」

「な、何よ。」

「これから俺と一晩過ごさない?」

のどの奥がからからに乾いていく。

タツヤの目は、マッコリのせいで少しうるんでいた。

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