結婚事情
「一人で悩まないでほしいな。」

「え?」

「結婚、まだ決めきれずにいるんだろ?そんなことくらい、ずっとハルの態度見てたらわかるよ。」

思わず胸がきゅっと痛くなる。

ずっとわかってた?

なのに、あんなに優しく抱きしめてくれてたの?

「・・・図星・・・か。」

ナオは私から目をそらして遠くを見つめた。

そして、ゆっくりと息を吐いた。

「急がせすぎちゃったかな。」

もう一度私を見つめた目は、心なしか潤んでいるように見えた。

もし、タツヤという存在が私の前にいなければ、何も迷わずナオを選べるのに。

タツヤが、あんな意味深な言葉を私に言わなければ、こんなにもタツヤのことが気にならなかったのに。

タツヤが存在する以上、私はナオとの結婚を決めきれない?

ナオの目を見つめながら、自分自身の不甲斐なさに涙があふれてきた。

ナオは私の顔をそっと抱きしめた。

ナオは今、何を思ってる?

本当は聞きたい一言を聞けずにいるような気がした。
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