結婚事情
「僕は、ハルを全身全霊で守るよ。どんなことがあっても。だから、今もこれから先も信じてほしい。僕はそれだけの覚悟を持って、あんなに早くからハルにプロポーズしたんだから。」

ナオは静かに、真面目に言った。

こんなにも、誠実で揺るぎない愛を注いでくれるナオに、結婚相手として何一つ過不足な部分は見当たらない。

見当たらないのに、いつも自分の中に違和感を覚えるのはなぜ?

安心しきって身をゆだねられないのはなぜ?

ナオの胸に抱きしめられながら、頭の中はとても冷静だった。

そのとき、ナオが言った。

「ただ、ハルの気持ちに揺らぎがあるなら、僕の決意も揺らぐ。」

「え?」

「結婚はお互いが、信頼しあえて、揺るぎない決意の元でしかできないものだと思うから。どちらか一方が、少しでも気持ちに揺らぎがあるなら、その結婚はうまくはいかないって思うんだ。」

ナオは暗闇の中で優しくほほえんだ。

「だから、ハルも正直な気持ちを僕に伝えてくれたらいいんだ。結婚はどちらか一方に少しでも迷いがあっちゃ前には進まない。そういうものだから。」

私はだまったままナオの顔を見つめた。

「そのときは・・・」

ナオは私から目をそらした。

「ハルの気持ちに迷いがあるなら、僕はハルの気持ちを尊重するよ。」


ナオの言葉に、揺らぎを感じた。

自分の気持ちを抑えてる。

私のために。

「ナオ。」

「ん?」

「もう少しだけ、私に時間をくれる?」

「もちろん。」

「私って、昔から気が焦ると、どうしても落ち着いて自分の気持ちを見つめられない傾向があるんだ。」

「じゃ、僕からもお願いがある。」

「何?」

「タイムリミットだけ決めさせてほしいんだ。」

「タイムリミット?」




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