結婚事情
「じゃないと、僕もいつまでも待てるほど気持ちに余裕がないし。」

ナオは少しだけ笑った。

「ハルが焦らない程度の時間ってどれくらい?」

こういう決断は、あまり時間がありすぎても、余計決まらなかったりするんだよね。

「じゃ、ナオが赴任する直前まで。」

「了解。」

ナオは、笑った。


ナオは優しい。

いつも私を優先にして考えてくれる人。

本当に申し分ない人。


でも、きっと結婚って、それだけじゃだめなんだ。

ふと、私の中でそういう思いが生まれた。

ナオの言うように、お互いが同じように相手に思わないといけない。

私はまだ、ナオが私を愛してくれてるほど、愛を感じていない。

感じていないというよりは、その愛を自分の中に気づけない。

決定打が、まだないんだ。

それは、タツヤに対しても言えること。

あと一ヶ月。

自分の中に決定打が生まれると信じて、真剣に向き合う時間。

無駄にできない。

ナオのためにも。

タツヤのためにも。

そして、アユミのためにも。
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