結婚事情
一日一日と丁寧に向きあうようになってから、しばらく平穏な毎日を過ごしていた。


そんなある日の朝、タツヤの部署の前を通ると、皆が険しい表情でせわしく動いていた。

こんな朝からばたついてるってことは何かあったのかしら?

肝心のタツヤの姿はそこにはなかったけれど。

気になりながら、自分の席についた。

ふと上司とその前に座る部下の話し声が耳に入ってきた。

「となりの部署、やらかしちまったみたいだぞ。」

「え?」

「ようやくとりついだ上海のお得意先に、でっかいポカミスやらかしたみたいでえらい騒ぎみたいだ。」

「どんなポカミスですか?」

「なんでも、上海の別の取引先の内々の契約書を、間違えて得意先の方に送っちまったらしい。内々だけに内容も他社には知られるとまずいデータが入っていたらしくってさ。これは部署だけじゃなくて会社として問題になってくるな。」

「そんなミス、新入社員でもしでかしたんですかね?」

「いや、それがそうでもなくてさ。俺も見込んでたやり手の若手だったんだけどねぇ。あいつも相当窮地に陥ってるはずだ。どうしてあんなミスやっちまったんだろうな。」

その話を聞きながら、背筋に冷たい汗が流れていった。

嫌な予感がする。

まさか、

まさかタツヤってことはないよね?

そのミスおかしたの・・・。
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