結婚事情
「え?いいの?」

ナオは驚いていた。

ナオにとっても一か八かの提案だったんだろう。

「うん。だって、今度いつお会いできるかわからないんだもの。ナオにはお世話になってるし、ご挨拶して当然だよ。」

そう言いながら、無理に笑顔を作っていた。

「・・・ありがとう。」

ナオは静かに言った。

ありがとう・・・って。

どういう意味なんだろう。

ナオはいつも、私の気持ちを思い計って動いてくれてる。

私の気持ちが揺れ動いてるのも、わかってて、全部引き受けてくれてるんだろうか。


今の私には、それがとても辛かった。

もっと、ナオに毒を吐いてほしい。

じゃないと。

私がどんどん腐っていくような気がする。

ナオの優しさに甘えて。

いつの間にか、私は優しいナオに、自分の気持ちを偽って話をするということができるようになってしまった。

それは、本当の自分じゃない。

だけど、それを知ってて、ナオは私を愛してくれるの・・・?
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