結婚事情
ミユの言葉で目が覚めたような気がした。

私の中では、もう全てがはっきりしていたはずなのに、結局結婚に意識が向きすぎて答えを出せずにまごついていたんだ。

今は・・・

結婚なんかできない。

誰とも。


誰が好きとか、誰と結婚したら幸せになれるだとか、

そんなことは、まだ結婚を意識する前の段階。

結局、ナオ、そしてタツヤと出会っただけで、結婚を決定するだけのものは、何一つ育っていなかった。

そんな状態で、ナオの御両親となんて会えない。


「わかった。」

私は力のこもった声で答えた。

「これから一人で大丈夫?」

ナオの御両親と会えないこと、ナオに早く伝えなければならない。

それは、ナオをひどく傷つけること。

そして、ナオとの別れを意味すること。

こんな土壇場でそんなことを告げる私が非常識な人間だって思われること。


一人で大丈夫?


ふと、一人で辞めていったタツヤの背中が私の頭に浮かぶ。

「うん、大丈夫。ミユ、本当にありがとう。」

私はにっこりと笑った。


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