結婚事情
一人で誰かを待つって、あまり好きじゃないけど、今はいくらでも待ってられるような気がした。

少しずつ、タツヤに会える時間が迫ってると思うだけで、信じられないくらいに胸が高鳴った。

緊張とか不安とかとは違う、新しい何か。

体中から溢れでてくるエネルギーがしっかりと胸の鼓動となって伝わってくるのを感じていた。


「本当に来てたんだ。」

後ろで声がした。

振り返る。


タツヤがそこに立っていた。

また少しやせたように見える。

慌ててきたのか、よれよれのシャツを無造作に着ていた。


「電話もらった後も、まだ半信半疑だったんだ。でも、まさか本当にここにいるなんてさ。夢を見てるみたいだ」

タツヤは、そう言いながら、わざとらしく目をこすった。

「でも、よかった。こんな風に押しかけて、タツヤがいやがるんじゃないかって少し心配してたの。」

タツヤは目をふせて、少し笑った。

「いや、うれしいよ。」

「本当?」

「うん。遠いのにねーさんありがとう。」

妙に真面目な顔をして言われたもんだから、一気に自分の突飛な行動に対する恥ずかしさで顔が熱くなった。

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