結婚事情
タツヤは目を閉じてうつむいていた。

早く何か言ってほしい。

思い切って告げた言葉だけがポツンと置き去りにされて、時間と共に現実味が薄らいでいく。

どれくらいの沈黙があっただろう。

タツヤが静かに言った。

「ごめん。」

ごめん・・・。

心の中で反復する。

「俺、今は誰かを支えたり支えられたり、誰かを愛したり愛されたり、そういう関係を築く余裕が全くないんだ。ねーさんのことを大事に思ってるとかそうじゃないとか、それ以前の問題で、俺、これから先どうすればいいのか、本当に・・・。」

タツヤはそのまま頭を抱えてふさぎ込んだ。




そうだよね。


そうだったよね。

どうして、タツヤに言われるまでにそんな簡単なことが理解できなかったんだろう。

私が今回タツヤに告げたことは、とても一方的な気持ち。

そんなこと言われて、タツヤが余計に苦しむことなんて考えもしなかった。


少しでも今のタツヤの支えになりたいだなんて、傲り以外の何物でもない。

タツヤの気持ちはタツヤにしかわからない。

どれほどの不安を抱えて、今ここに座っているのかなんて、誰にもわからない。


タツヤ・・・

ごめん・・・。








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