結婚事情
お酒が入ると、二人とも少し緊張がほぐれて会話を楽しめるようになってきた。

水口さんは自分のことをたくさん私に教えてくれた。

自分は次男で、上に三つ違いのお兄さんと下に五つ違いの妹さんがいるってこと。

お兄さんは優等生で、今は弁護士ってこと。

水口さんはそんなお兄さんを見て、なぜだか優等生になりたくなくて、サッカーに逃げていた時期があったってこと。

高校の時につきあった彼女が、すごく勉強をする子で一緒の大学に行きたくて、ようやく勉強を本気でやりはじめたこと。

イギリスに留学中、イギリス人の女性に積極的アプローチを受けて逃げ回ったこと。

自分の得意な英語を生かせる今の仕事について、充実しているってこと。

そして。

すこし言いにくそうに、ビールを口に運びながら、言葉を選びながら言った。

「今日、帰り際に上司に呼び止められて、正式に海外赴任が決定したんです。」

え?

海外・・・?

確か、以前、自分が要望すればそういう可能性もあるとか言ってたけど。

「僕も、今のように独身で行くことには躊躇があって、ずっと先延ばしにしていたんですが、新しいプロジェクトが来年から始動することが決まって、その立ち上げにどうしても行ってもらいたいということなんです。」

「そ、そうなんですか。いつ、からですか?」

「早ければ三ヶ月先と言われました。」


ふぅ。

せっかく、ほんのり芽生えた恋の気持ちだったけど。

やっぱりこういう男性とは私には縁がなかったってことだよね。

すっかり酔いが冷めていく自分がいた。
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