結婚事情
6章 亀裂
そして、少し休憩して体もずいぶん軽くなった私は、外で待っていたタツヤとタクシーで帰った。

タツヤは私を気遣ってか、結局さっきの話には全く触れず。

たいした会話もせずに、送り届けてもらってそのまま別れた。

一応、「お茶でも」って声はかけたんだけど、「今日はこのままゆっくり休みなよ」ってタツヤは少し笑って駅の方へ歩いていった。

なんとなく寂しげな背中を見送りながら、私自身の気持ちが少しだけ揺れるのがわかった。

なんだろう。

こういう気持ち。

ナオに対して持つ気持ちとはまた違う、もっと複雑で、繊細で、その中心の部分に軽く触れるだけで、パーン!と音を立てて割れてしまうような。

今日、タツヤと無理して会ったのは間違いだったのかもしれない。

会わなきゃよかった。


一日家で寝ていたら、翌日には熱も下がった。

だけど、さすがに昨日の今日だし会社に向かう気にはなれない。

やり残した仕事、そして、アユミのことが気になりながらも、会社に休みをもらう電話を入れた。

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