結婚事情
ナオがもし、私にそんな意地悪なことを言ったりしたら、私はナオを許せるんだろうか。

タツヤみたいに。

優しさと意地悪な部分のギャップに、それなりの魅力を感じ続けることができるんだろうか。


仕事の話をしているナオの声を電話の向こうで聞きながら、ぼんやりと考えた。

変なの。

急にナオに対して、不安感を持つようになるなんて。

昨日のことが原因かしら。


すると、ふいにナオが聞いてきた。

「で、ダブルデートの話。どうなった?」

あ。

「ん。実は立ち消えになりそうなんだよね。」

「そうなの?アユミちゃんとタツヤくんだっけ、うまく話がまとまらなかった?」

「まだはっきり決まったわけじゃないんだけど、ひょっとしたら、そうなるかも。」

「そうなんだ。できればアユミちゃんの恋の成就手助けしたかったんだけどな。」

そうだよね。

私もそう思ってた。

思ってた?本当に?

「後でアユミにその話しようと思ってる。またはっきりわかったら連絡するね。」

「うん。わかった。ハルも今日は本調子じゃなさそうだから、早めに寝なよ。それじゃ、また電話する。」

「ありがとう。またね。おやすみなさい。」

「おやすみ。」

ナオの『おやすみ』という口調は、信じられないくらいに優しくて包容力がある。

その声を聞いた後、私は必ず睡魔におそわれるほどだ。

ナオはいい人だ。

私にはもったいないくらいに。
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