結婚事情
「あ、だまってたっていうか、やっぱりアユミはタツヤのこと好きなわけだし、そんなことわざわざ言ったところで、色々と不安になっちゃうかなって・・・。」

電話の向こうでアユミのため息が聞こえた。

「そういう気の遣い方されんのって、逆に気分悪いよ。」

今まで聞いたことがないようなアユミの口調だった。

「ごめん。」

思わず反射的に謝る。

「何を謝ってるの?なんだかさー、こんなこと言うと嫌な女になっちゃうけど、実はハルナもタツヤが好きで、タツヤもハルナのこと好きだったりするんじゃないの?」

何言ってるの?!

アユミ、かなり興奮してる。

でも、そりゃそうよね。

そんな気の遣われ方されるの、私だって不愉快になるはずだもの。

最初からきちんとアユミには伝えるべきだった・・・。

「本当にごめん、アユミ。私がタツヤのことを好きなわけないじゃない。今は結婚前提に水口さんとお付き合いしてるんだよ?それに、タツヤだって。」

「タツヤは駅で偶然ハルナに会ったって言ってたけど、どうしてわざわざハルナの家の近くまで行く用事がある?なんだか訳わかんない。二人して、私のこと馬鹿にしてるんじゃないの?」

アユミ、そんなことないよ!

心の中で叫びながらも言葉が出てこない。

まぶたがじんわりと熱くなってきた。

私は、アユミに幸せになってもらいたいって、本気で思ってるのに。

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