この美しき世界で
赤の戦士は疾かった。駆け出したタイミングは同様に。しかし一歩も二歩も他より抜きんで出る。


あっという間にボーンナイトの集団に接近、接触。ハルバートを先頭にいた骸骨に突きたてるとそのまま縦横無尽に振り回す。


防御もままならぬほどの攻撃は嵐に巻き込まれたかのように。一部のボーンナイトの進撃が止まる。


そして勢いを弱めた地獄の戦士に白い戦士が次々に突進していく。


乱戦と化した戦場で白い戦士達が倍もある地獄の戦士の足を完全に押し留めた。


ある者は剣で、ある者は槍で、またある者は斧で。骸骨を砕き、叩き潰していく。


戦いは何時しか『バサク』の圧倒的優勢に変わっていた。


「どうした!魔族ってーのはこんなもんかよ!」


ナツがハルバートで目の前の敵を薙払い吠える。確かに、余りに味気ない。


魔族も先の『千年戦争』における『バサク族』の武勇は少なからず知っているはずだ。


にも関わらずこんな勝算のない戦、ボーンナイトだけでの突撃などを仕掛けてくるだろうか。


「杞憂に終わればいいけどね…。」


戦場を見つめ、一人セロは考えていた。


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