この美しき世界で
「まぁ現状のままなら…。俺が行くまでもない、が…。」


しかしこの胸に残る不安は拭えない。圧倒的優勢にも関わらず。魔族はこの五百年でそれ程までに衰えたのだろうか。


地獄の戦士と吟われるボーンナイトの動きは余りに緩慢で鈍重。知能も高いとは思えない。


『バサク』の白い戦士達は次々と地獄の戦士を墓場へと送り還していく。


気が付けば地獄の戦士達は全滅と言っていい程に数を減らしていた。





「手応えが無さすぎんだろ。緊張して損したっつーの。」


ナツが転がる骨を蹴り飛ばしながら舌を打つ。白の戦士達も同様にやや消化不良か。乱れた息を整えている。


「まぁいっか。セロ!俺らの初勝利だ!勝鬨をあげようぜ!」

「ああ…。」


なんだ。なんだこの悪寒は。戦いは終わったのに。そのはずなのに。


戸惑いを隠せないセロが剣を掲げたその時だった。戦場にパチリ、パチリと渇いた音が響く。


「いや、お見事です。」


それと共に聞こえた声に戦士達の視線が集中する。そこにいたのは。


蒼白の肌に黒のタキシード。人間族とよく似た外見の、一人の魔族だった。


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