この美しき世界で
━━━…!!


声と共に届けられたのは痛い程の威圧感。同じ空気の中にいることすら辛く感じる。


果たして若き戦士達の中にそれに気付けた者は何人いただろうか。


束になっても敵うことのない圧倒的なまでの実力差に。


高い知能を持ち、言語を操ることが出来る。それはいわゆる中級以上に分類される魔族。


古くから伝わる書物によれば人間とよく似た姿をした魔族は多数存在する。


しかしその中でも中級以上の魔族は一握り。その全てに非常に高い戦闘能力が確認されている。


例えば、単騎で城を攻め落とせる程の。


「…が行く。」


真っ先に気付いたセロはありったけの酸素を喉から絞り出すように叫ぶ。


「俺が行く!他の奴は手を出すなっ!」


やや呆然としていた戦士達も事態の重大さに気付く。


あのセロがここまで慌てふためく。これが尋常ではないことを戦士達は一瞬にして理解した。


しかしそこから逃げ出す者は一人もいない。誰もが思っていることだ。


セロならば勝てると。


そしてそれは戦士の掟。敵に背を向け逃げる臆病者は『バサク族』の戦士にはいなかった。


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