この美しき世界で
黒の風が舞う。誰よりも疾く力強く。小高い丘を一気に駆け降りていく。


その姿を見つめる白の戦士達、赤の戦士から歓声が挙がる。


そして更にそれを見つめるは蒼白の魔族。不気味に微笑む表情。頭に生えた一角を揺らす。


「全く戦士とかいう人間族はせっかちで仕方ない。まだ話もしていないというのに。」


やれやれと大袈裟に溜め息を吐くのは余裕からか。それとも元来の気性なのだろうか。


「まぁ、この中では一番マシなようですし。」


白い戦士達の間を駆け抜けながらセロは得物であるミスリル製のソードを鞘から引き抜いた。


ミスリルの硬度はゴーレムの硬く頑強な皮膚やドラゴンの鱗も引き裂くことが出来たと伝えられている。


如何に中級以上の魔族であれ通用しないということはないだろう。


「少し遊んであげましょうかね。」


セロは瞬く間に蒼白の魔族に接近すると小さく息を吐いた。


「しぃっ!」


コンパクトに。しかし力強く。ソードを魔族向け真っ直ぐに突く。


ふわりと体を揺らしそれをかわす魔族。勿論一撃で決められるなどとはセロも考えてはいない。


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