この美しき世界で
素早く、細かく、次手に繋がるように。連撃を繰り出していく。


セロの実力を知っている戦士達はその一撃一撃に期待をよせ歓声をあげた。


ふわり、ふわりと連撃をかわしながら魔族は嬉しそうに微笑む。


「疾く良い太刀筋ですね。それに体のバランスも良い。」

「っ!」


分析を口にした魔族にセロは唇を噛み締めた。彼の実力を見て気分を良くしたのか、魔族は徐々に饒舌になっていく。


「貴方はいい戦士だ。貴方の仲間も。」

「下級魔族だけの力では及ばないぐらいに。」

「だが私は貴方より強い。貴方より優れている。」


セロの手は止まらない。されど攻撃は当たらない。まるで何事もないかのように魔族は口を動かしていく。


いつの間にか戦士達の歓声は止み、代わりに沈黙が場を支配していた。


「今は此方に来ているのも私ぐらいだ。私は弱った結界なら無効化出来ます。」

「最も結界を無効化出来るのも私ぐらいですが。」


当たらない。当たらない。当たらない。


「魔界は淡白で飽々だ。遊びがてら立ち寄った場所で貴方のような戦士がいたのは幸運でした。」


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