この美しき世界で
「はぁ…はぁ…。」

「やった…?」

「やったぞ!セロとナツがやった!魔族を倒した!」


仰向けに倒れ微動だにしない魔族を見て、皆口々に歓喜の声をあげた。


上位魔族を倒した。それは驚くべきことだし大きな戦果。二人は呆然としていたが戦士達は彼らの功績を讃えた。


「や、やったなセロちゃん。」


━━━おかしい。


納得がいかない。あの圧倒的なプレッシャーを与える相手がこんなにも呆気なく。


━━━違う。


「セロ、ちゃん…?」


あの余裕の笑みはなんだ。何故手を出してこなかった。こいつがやったことはただ攻撃をかわしていただけじゃないか。


━━━不味い。


それはこういうことではないか。こいつには死なない自信があった。


つまり。


「おやおや。ぬか喜びさせてしまいましたかね。」


こいつは最初から本当に。遊んでいただけなのだと。


「なっ!?」


いつの間にか起き上がった魔族。横薙に振るった腕。その拳はすぐ傍にいたナツの頬を捉え鈍い音をたてる。


一回、二回、三回。何度も地面に叩きつけられながら。


数十メートル吹き飛んだナツがそのまま動きだすことはなかった。


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