この美しき世界で
井の中の蛙とは自分のことだ。『バサク』という戦士としてのブランドに腰掛け、その頂点に満足していた。


目の前には更に大きな山があったというのに。


実際、『リフス』までの旅路では自分より余程優秀な戦士も沢山いた。初めて魔法を見ることも出来た。


閉鎖された空間に生きてきた。だから世の中を知れば知るほどに、自分の矮小さを改めて感じとる。


しかし悔しいとは思わなかった。


あの魔人に与えられた恐怖と力の証明はセロの感情の一部を欠落させていた。


それは闘争心にも近い、そんな感情。





「ホントここは空気が美味いねー。依頼で溜った疲れが洗い流されるわー。」


ナツがグッと伸びをして全身で空気を吸い込んでいく。


『リフス』は良い所だ。森に周りを囲まれた緑豊かな自然の町。


差し込む太陽光は幻想的かつ美しく、生み出す酸素は素晴らしく美味い。


育つ野菜や果実はとても新鮮で、それを糧に多くの動植物が暮らす。町中を野生の動物が歩くのなんか当たり前のこと。


自然との共存が出来ているのがこの町一番の特徴だ。

偶然たどり着いたこの町を俺達が拠点に選んだのは必然だったかもしれない。


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