この美しき世界で
そろそろ時間だ。町長や住民はお願いしますと頭を下げると足早に町へ向かった。


その方がいい。近くにいれば巻き込まれない保証はない。そしてそれから一時間後。





「さぁ…来たわよ。」


魔法使いの女が指さす方向。そこには高々とあがる土煙。オークの軍団。斧や槍といった荒々しい武器を手に猛然と迫り来る。


「後衛!魔法の準備は!?」

「充分!でっかいの叩きこんでやらぁ!」


皆自然と声が高ぶる。あんなに多数の魔族とぶつかるのだ。落ち着き払えというのも無理だろう。


「弓使いは奴らを牽制して動きを緩めて!魔法はタイミングを合わせて!」

「任せておけ!奴らを足元から崩してやる!」


魔法使い達の手元には詠唱されよく練られた魔力の塊。弦を引き絞り、狙いを定めるのは弓使い達。


「ブォォォォォォォ!!」

野獣の咆哮。姿と共に地鳴りが徐々に近づいてくる。先導している魔族の姿はまだ確認出来ない。


「討ち漏らしたのは前衛!頼むわよ!押し留めて!魔法を練るのに時間がかかる!傷を負ったら無理せずに退避!僧侶が治療するわ!」


戦略を反芻するかのように女は叫ぶ。激突まであと数分。


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