この美しき世界で

「セロちゃん…。なんだかよー。俺はわくわくしてきたよ。」

「何が？」

「なんかさ。こうやって戦うのも悪くねぇよな。」

「俺には…わからんね。」

「セロちゃん…。」


問掛けに表情を変えないセロを見て、ナツは小さく溜め息をつく。


彼の視線はただ真っ直ぐにオークの群れに向く。戦うことで全てを忘れようとするその姿はどこか痛々しくナツの目に映った。


「さぁ行くわよっ！用意………撃てっっっ！」


そんなナツの思考を掻き消したのは後ろから飛ぶ怒号。


魔導士達が詠唱していた赤色の魔力が一気に膨れ上がりオークの群れに向かう。


練りに練った魔力の塊は火魔法。小さな火が幾重も重なりそれは大きな炎に姿を変える。


「炎よ…！」


その中で唯一レベルの違いを見せたのはやはりあの女魔導士だった。彼女が放ったのは一際大きな炎の塊。


その炎が先ほどの炎と合わさりその姿をより巨大な物へと変えていく。


その巨大な炎は群れの先頭に直撃し、オーク達を飲み込んだ。


「すげっ…！」


誰もが驚くその光景。だがまだそれは早い。全滅させたわけではないのだ。