この美しき世界で
「絶好調だなセロちゃん。」


彼が用意された水筒を口に運んでいると、後ろから声をかけて来る男がいた。


「ナツ。」


やはり同様に白銀の髪をなびかせた『バサク族』の戦士。


他の戦士と違うのはその纏った鎧が赤いということだろうか。


「さぁ、次は俺と戦ろうか。」


彼の手招きに、セロは笑顔で応じた。水筒を投げ捨て再び木剣を構える。


「行くぜっ!」


ナツが扱うのは槍を模した細長い棒。木剣の遥か間合いの外から彼は鋭い突きを放つ。


それをセロは木剣で軽く捌いてみせる。


実質この町でセロの相手をまともに出来るのはこのナツ只一人だ。


赤い鎧は『二番手』の証。彼の槍捌きはその名に恥じぬ見事な腕前だった。


「そう言えばさ。」


槍を縦横無尽に振るいながら彼はセロに話しかける。


「ん?」


セロもまた槍を捌きながらそれに耳を傾けた。


「聞いたか。黒の森の向こうが随分と騒がしいらしい。うらっ!」

「へぇ。よっ!」

「危ねっ!魔族がまた戦争を起こそうと企んでるって話だぜ。」

「随分ときな臭い話だな。でも大丈夫だろ。しぃっ!」


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