この美しき世界で
━防御……しない!魔力が尽きちゃう…!


なんとか一撃、耐えきれば魔力は溜まるはず。そうすれば起死回生の一手になる。


だがそれは余りに過酷。一撃で全てを消し炭にする裁きの雷を生身で受けて無事に済むほど甘くはない。


それでもこの魔力、あと数秒で溜まるであろうそれはまだ足りない。


防御にそれを回せば回避も相殺も出来るだろうがそれをすれば己にもう勝機はない。だから。


女魔導士が選んだのは耐えきる決意。今のメンツでメイジに対抗出来るのは自分ぐらいだ。


戦士だけで魔法使いと戦うなんて相性が悪すぎて話にならない。


「はぁぁぁ!!」


気合いを入れるように声を絞りだし雷を待ち受ける。もう眼前まで迫り焦げた匂いが鼻をうつ。


「さぁっ!きなっ!」


だがそれが魔導士の体に届くことはなかった。


「え…?」


雷雲を割り突如現れた一本の長い得物が雷の進行方向を遮ったのだ。


「セロちゃんもう一個頼んだぁぁぁ!」


女魔導士が真横を見ればまた新たな雷が迫っている。それは目の前で黒の戦士によって叩き払われたのだが。


「さぁ、頼むよお嬢さん。」


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