この美しき世界で
セロはというともう観念した様子で彼女が口を開いた辺りから無言で身支度を整えていた。


順応力が高いのか諦めが早いのか。


「さーいきましょ!」


ともあれシンシアの掛け声と共に三人は宿を出発した。


しかしなんとも賑やか、いや騒がしい町だ。そこら中からツルハシが岩を砕く音と野太い声。


果ては爆発音さえ聞こえてくる。恐らく魔石。魔力を籠めた鉱石を爆発させて坑道を作っているのだろうが。


さながら戦場のような雰囲気だ。とても永住したいとは思わない。


「やっぱマッチョが多いよねーマッチョ。」


ケラケラと笑いながらナツが辺りを見回す。勿論戦士であるナツとセロも鍛え抜かれた肉体を持っているが鉱夫達には敵うまい。


首が隠れるんじゃないかという体つきにやたらと太い腕。正にこれぞ肉体美といった様子だ。


「こんなのに絡まれるんだからたまんないね。」


セロがうなだれて溜め息をつく。皆が皆そうではないのだが鉱夫には柄の悪い連中も多い。


この町に来て絡まれたのは四回。これで五回目になる。


「よぉー兄ちゃんら。良い女連れてるねぇ。」


彼らは決まってこんな台詞を吐いた。


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