この美しき世界で
良い女。その言葉に気分良さげな、そして自慢気な表情を浮かべるシンシアはさておき。


彼らにはもうちょっと絡み方にバリエーションを持って欲しい。


毎度毎度同じような絡み方をされるこちらの身にもなっていただきたい。


彼らも彼女の中身を知ればきっと無言で立ち去ってくれるに違いないのだが。
それを伝える術はないのが非常に残念だ。


半ばげんなりとした様子でナツは鉱夫な前に立ち塞がる。


「そりゃどうも。そいじゃ俺ら急ぐんで通していただいていいっすかねー?」


当たり障りがないような口調で先に進もうとする三人。まぁこの手の輩にそんな手段が通用するはずもない。


「まぁ待てよ兄ちゃん。ちょっと女貸してくれりゃ痛い目見ずに…。」

「…!」


屈強な握力がナツの肩を掴む。心底嫌そうな顔を覗かせた彼が男を投げ飛ばしたのは仕方ないことだったのかもしれない。


「ぐ…え!?」


その巨体をぐるりと一回転させ轟音を響かせながら大地に沈む男。勿論取り巻きが黙っているはずもない、が。


「動かない方がいいよ。俺はナツみたいに優しく済ませない。」


喉元に突きつけられた銀色の輝きが彼らの動きを止めていた。

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