この美しき世界で
状況だけ見れば一方的な暴行を加えるナツ。刃物を突きつけるセロ。何食わぬ顔で眺めるシンシア。


どちらに非があるかは明白で。むしろ彼らが極悪人に見えて当たり前である。


そこに正義感の強い人間が助けに入ったことに違和感は何もない。


ただいけなかったのはこの日ナツのストレスが絶頂にあったことと、彼の中でマッチョ=鉱夫=こいつらの仲間という図式が出来上がっていたこと。


反射的にナツの無言の返答、右拳が男に向けられていた。


「ん。若造やる気か。やる気ならこちらも容赦はせんぞ。」


男も反射的にそれを左の掌で受け止めナツを睨みつける。それと男の右拳がナツの顔面を捕えたのは同時のことだった。


「がっ━!?」


膝を折りながらナツは後ずさる。体ごともっていかれているのがその威力の高さを指し示す。


「なっ…ろぉっ!!」


すぐに体勢を立て直し反撃に転じられるのは流石といっていいだろう。


戦士である彼が近接格闘に通じていない訳がない。フェイントのローキックを折り混ぜながら側頭部に向けてハイキックを叩き込む。


「ほっ。危ない危ない。」


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