この美しき世界で
シドに紹介されたレストラン。飯は確かにうまいがどうにも納得がいかない。


僧侶、神に仕える聖職者。か弱き子羊に神の教えを代弁する者。


回復スキルに優れ、致命傷や病を治癒する冒険者のみならず町には欠かせない役割をもつ人間だ。


宗教の違いはあるから今目の前で骨付き肉をほうばっているのはいいだろう。



だがこのシドという男。僧侶というにはあまりに不似合い。


熊のような体躯はもちろんのこと、先程のナツとの攻防から見て取れるように戦闘技術も並大抵ではない。


本人曰わく


「長い放浪生活の中で勝手に鍛えられた。」


らしいが。真偽は定かではない。そもそも放浪生活ぐらいでこうなるなら冒険者は今頃みんなマッチョだらけだ。


「ちょっといいかしら。」


納得がいかない中シンシアがシドに向かい尋ねる。


「治療魔法はどの程度使えるの?それだけ長い放浪生活をしていたなら中級?それとも上級まで使いこなせるのかしら?」

「む?ま、まぁある程度はな…。中級の初歩ぐらいは使える。」

「試してみてもいいかしら?」

「か、構わんがどうやって…。」


シドの了解を得た彼女はにっこりと微笑んで





ナツの腕にフォークを突き刺した。


「ぎゃ、ぎゃあああああああ!!」

「ほら!早く治療魔法を!ナツが痛がってるわ!」


自分でやっておいて何をいっているのか。シドの戸惑いは当たり前だ。


セロに関していえば完全に固まっていた。それにここはレストランだ。周りの客席もざわめきだす。


「さぁ早く治療魔法してあげて!このままじゃナツが死んじゃうわ!」

「てめぇ…シンシア…覚えてろよ…。」


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