SOUND・BOND
とてもじゃないが、そんなところでは弾けない。
ただでさえさっきまで狭い会場でガンガン響かせて演奏してきたばかりだというのに、ここへ来て静かに弾けないなんてごめんだ。
「今日は真空のためだけに弾ければいいんだ。他のやつらのことなんか気にするな」
「でも、あの人たち陸燈お兄ちゃんを見に来たんじゃないのかなあ?」
真空の屈託の無い言葉に陸燈は少し目を見開いた。
「なんでそう思うんだ?」
「だって、あの人たちさっきのライブに来てた人たちだよ?」
SSに跨ったままの真空に驚きの顔を向けると、少女は言う。
「お兄ちゃん、気付かなかったの?」
「いや……」
そう言われても、あの時はお前を捜すのに気を取られていて、他の客など記憶するほど見てはいなかったんだと、陸燈は内心で渋った。
「まあ、始めるか」
気にしたところで自分には関係の無いこと。
ここに集まった連中が、たとえ自分目当てだったとしても、陸燈には何かをしてやる気すら起きなかった。
今は真空、そして自分のために弾ければそれでいい。
縛り付けていたアコギを真空から離して、それを地べたに置くと、同じような動きで真空もバイクから降ろしてやる。
「真空、こっち」
少し下がったところに真四角に削られた石のブロックが並んでいる。
それに囲まれたかたちで広場が出来上がっている。
その石に陸燈は腰を下ろす。