SOUND・BOND
真空も集中できずに後ろをちらちら振り返っている。
それは陸燈の周りにいる人全てにいえることだった。
(そうか!)
陸燈は顰めていた眉を持ち上げた。
あの時マスターが言っていた「気をつけて」という言葉はこのことだったのかと、今になって気付いた。
「真空――」
「お兄ちゃん、続けて?」
「え……?」
弾くのを止めようとしていた手が、その言葉に迷わされる。
「最後まで弾こうよ。陸燈お兄ちゃんのギター、みんなに聴かせてあげればいいよ。すっごく上手なんだから」
真空の嫉妬心(シットシン)は薫季と秋司に出逢い会話したことで違うものに変わっていた。もちろん陸燈には少女の心の経緯や変化など知る由もない。
そう言って、真空はすっと立ち上がると陸燈のすぐ隣の石に並ぶかたちですとんと座った。
黒く澄(ス)んだ瞳が、アルマンディン・ガーネットの瞳を覗き込んでいる。
その間に、噴水の周りの人垣がこっちに流れてきていた。
一瞬のうちに陸燈の周りに人垣が出来上がる。
陸燈は短く、溜め息のような嘆息を漏らした。
ほとんどが女性ばかりだ。確かにライブハウスに集まってきていた客は女性ばかりだった。