SOUND・BOND
とても気持ちの安らぐ場所。
本当に――
「真空がいてくれて良かったよ」
まだ笑いの止まない妹に呟く。
「え?なんて?」
自分の笑い声で聞き取れなかったと思っているのだろう。陸燈自身、独り言で言ったようなものだから、聞いてくれていなかったことは気にも病まない。
「なんでもないよっ」
言いながら弾みをつけて立ち上がり、しゃがんでギターをケースに戻す作業を進める。
斜め後ろで真空は宙に浮いた足をぶらぶら動かしている。それをなんとなく気配で感じながら陸燈は背を向けていると、その空気がぴたりと止まった。
「……真空?」
ギターケースの留金をかけて、少しの間のあと首だけで振り向くと、案の定静止している真空が目に入った。
少女の目はこっちを見ていない。
「いい演奏だったな」
突然かけられた男の声。
陸燈は素早く視線を巡らす。
丁度噴水の前。人影がふたつ並んでこっちに歩み寄ってくるところだった。
真空の視線もそこに向けられていたことに気付く。
言ったのは向かって右側に立つ、少し伏せ目がちで顔のパーツが綺麗におさまり整った顔立ちの男。
「真空ちゃん、また会えたね」
並んで歩く、きつい目つきの男が、イメージと少し違った雰囲気の言葉を投げかけてくる。