SOUND・BOND
高校1年の頃から始めたバンドは、たまたま見に行ったバンドのコンサートがきっかけだった。
小学校の頃からの腐れ縁であるベースの秋司は、ずっとミュージシャンになりたいと言っていた。
薫季には全く興味のない分野で正直面倒臭かったが、親友のなりたい夢を冷たくあしらうことは絶対にしたくなかったから、その夢の舞台を一度くらい一緒に見に行ってやろうとこの時は頷いたのだ。
秋司に半分無理やり見に行かされたライブで、まさか運命が大きく変わり動き出すとは薫季自身思ってもみなかった。
会場はもう殆ど満員で入場できないんじゃないかと思うくらい人で溢れていた。だが、心配無用というように秋司は2枚のチケットをひらつかせた。指定席で、しかも前から5列目という正直根性と執念がなければ取れない席だろう。ある意味改めて彼の本気というものを垣間(カイマ)見た瞬間だったと思う。
そして開演。会場が暗くなり軽快な曲が流れ出す。ステージにカラフルな照明が当てられ、バンドにライトが向けられると同時に客席からの悲鳴に似た歓声が沸き起こった。
薫季は最初気後れしてこの逸(ハヤ)る会場の雰囲気についていけなかった。
隣にいる秋司もいつもと違った熱の入りようで、座ってなどいられず立ち上がって歓声を上げていた。
薫季が目を丸くして親友を見ていたら、流れていた曲が止まり本格的に出演バンドの演奏が始まる。
薫季は素直に圧倒された。
流れるようなギターにそれを支えるベース。そしてリズムを豪快に刻んでいくドラムに迫力のある歌声。――と、この時の薫季にはそこまで分析できたわけではなかったが、ファンが興奮するのも無理はないとすんなり認めさせられたことだけは確かだった。
自然と自分の体がリズムに合わせて揺れているのにも驚いた。その時隣から秋司が声をかけてきていることにも気付かないくらい聴き入っていたのだ。